らぷそでぃ〜 いん アドラー心理学 

 アドラー心理学の「目的論」


 人間の行動には目的がある。

 アドラー心理学の基本的な考え方のひとつに「目的論」というものがある。ひとことで表せば「人間の行動には目的がある」となる。なるほどね。それはそうだろう。別に目新しくない考え方である。ところが我々はなかなかこのように考えない。

 例えば、子どもが不登校になったら「なぜ?」を追求しないだろうか?

 育児が悪かった?スキンシップが足りない?親子の対話が足りない?友達との相性が悪かった?先生との相性が悪かった?気合と根性が足りない?あのTV番組が悪かった?TVゲームが悪い?インターネットが悪い?日本の教育行政が悪い?母乳が足りなかった?通学路に悪い霊が居座っている?

 目的論の反対が原因論で「人間の行動には原因がある」とする原因はなにか?を追求する考え方である。
過去に遡りその結果を引き起こした原因を探ることによって問題を解決しょうとする手法である。物理現象を解き明かす方法論と同じである。しかし人間の行動は物理現象と同じ方法論で解き明かすことは可能なのか?

 人間の行動と物理現象には決定的な違いがある。人間には意思があり、物理現象には意志はない。人間の行動に絶えず意志の力が働いている。「こうしたい」「こうなりたい」「こうさせたい」などの意志や目標)があり、その目標達成に向かって行動する。

 「目的論」の考え方では、不登校には「こうしたい」「こうなりたい」「こうさせたい」などの意志や目標があり、その目標達成のための手段(不登校)であると考えるのである。

 不登校の原因は何か?例えば、育児が悪かったとする。しかし現実には不登校と育児の関係は多くの要因が複雑に絡み合っているのではないでしょうか?複雑に絡み合っている要因を根気強くひとつひとつ解きほぐして行く手法を否定はしませんが・・・・はたして可能でしょうか?それから過去は変えられません。原因が判明しても過去は変えられないのである。

 不登校の目的は何か?例えば、親の注目を引くためだったとします。親の注目を引くためだったら不登校以外にも違う方法があり本人にも提案ができる。また目的は本人の意思によって変更も可能なのである。

 ところが人間の行動の目的は自覚的な場合と無自覚的な場合がある。私たちが行動するとき、常に思料深く考え、メリット・デメリットを考察し、あらゆる可能性を吟味して決断をくだす!ことはしません。過去の経験則から瞬間的に決断し行動します。その結果、行動の目的は無自覚的になっている。
 人間はある程度経験を積み重ねると過去経験則から「このケースならこの行動」「あの状況ならこの行動」といった行動パターンを形成する。アドラー心理学ではこのような行動パターンを「ライフスタイル」と呼んでいる(ライスフタイルについては詳しく扱うと長くなるので別に扱うことにする)。

 無自覚的になっている目的やライスタイルを探ったり調べたりする方法を述べると長くなるので割愛するが「○○さんは、なぜ?こんなことをするのだろうか?」という原因論の視点にプラスして「○○さんが、こんなことをする目的はなんだろうか?何を達成したいのだろうか?何を得たいのだろうか?」という目的論の視点を加えて人々の行動を観察すると、今まで見えてこなかったことが見えてくる。少なくとも私はそうでした。


参考文献
 
アレックス L.チュウ 著 岡野守也 訳 「アドラー心理学への招待」 金子書房
 岩井俊憲 著 「アドラー心理学による カウンセリング・マインドの育て方」 コスモスライブラリー
 野田俊作 監修 現代アドラー心理学研究会 編集 「アドラー心理学教科書」 ヒューマン・ギルド出版部


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