●ベートーヴェン 交響曲 第6番「田園」
  カルロス・クライバー/指揮
  バイエルン国立管弦楽団
  録音:1983年11月7日(L) 
  独ORFEO C 600 031B
  Cover Design:Atelier Langefass



 第1楽章、かなり速いテンポで緩急やメリハリをクッキリ付けている感じである。しかし、速いテンポに必然性が
感じられず緩急やメリハリもどこか唐突で違和感を覚えた。
 それが主題展開部から速いテンポから躍動感が生まれ、緩急やメリハリ効果もクライバーの血が通い始める。
ようやく指揮者とオケの呼吸が一致したようだ。
 「田舎に着いたときの云々・・・・」といった表題の趣は吹き飛んだが、スピードとメリハリ効果によって活気と生命
力が飛び出す演奏となり、最初の違和感はなくなりクライバーの生みだす世界に夢中になった。
 第2楽章もスピードとメリハリ効果を効かせたスタイルで、メロディーはデリケートに奏でられ、大きな起伏を伴な
い濃密な演奏を聴かせている。

 第3楽章は速い速い。スピードの限界を一瞬超えている?と感じてしまう部分もあるが、恐れず怯まず突き進む
おもい切りのよさがプラスに作用している。
 第4楽章は怒涛の「嵐」で一気呵成の畳み掛けに「よくもここまで大胆に」と思う。しかも雑さを感じさせない、仕
上がりのよさに息を呑むばかりである。
 最後の第5楽章は第1楽章以上に”活気と生命力”はみ出す演奏である。テンポも頂点に向かい激しく変化する。
その灼熱ぶりは息を呑む。特にテンポを詰めるときの切羽詰まった雰囲気は大胆極まりない。 そして最後はメロ
ディーをたっぷり歌い、今までの激しさを徐々に開放してコーダーを締め括る手腕に感動を覚えた。

 何処を切ってもクライバー色に染め抜かれ演奏で「田園」交響曲の情緒的な雰囲気は消し去られているが、少
なくとも私はクライバーの生みだす生命力溢れる推進力と灼熱の起伏に夢中になりCDを聴いている最中は素晴
らしい演奏に接している充実感があった。
 しかし正直に告白すると・・・・聴き終えて振り返ると全体的に起伏の激しさが少々唐突で、もう少しなめらかさが
ほしいと思った。

 録音状態ですが諸般の事情によりカセットテープが音源に使われたそうです。そのため80年代の録音としては
ヒス・ノイズは多めで、高低音の伸びも乏しく、テープ走行の不安定感も感じられます。
 しかし、ヒス・ノイズや聴衆の咳払いを無理やり消し去らないマスタリングを行なったようでサウンド・クオリティは
非常に生々しく好感がもてた。この演奏を聴くのに最低限必要な音質+αは確保されている。平林直哉氏も絶賛
するマスタリングであろう?勝手な想像ですが・・・・

 03/11/22

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