●モーツァルト 交響曲 第29
 カール・ベーム/指揮
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:198027〜28
 DG 3111-17

 ベーム最晩年の録音のひとつである。特徴的なのは第1楽章でゆっくりしたテンポで、淡々と進められる
印象である。ところが聴き進むとこのテンポが心地よく適正なテンポに感じられるのである。また、あまりテ
ンポを動かさないといわれているベームが主題繰り返しへの経過句と、展開部への経過句、コーダへの経
過句でぐっとテンポを落としてロマンティクな味わいを醸し出すのである。

 あのドイツの頑固爺のベームが!である。

 第1楽章に限らず全体的に感じるのがベームの厳格な指揮とウィーン・フィルの情緒的な雰囲気がうまい
具居合いに溶け合い不思議な魅力を生み出していることである。この不思議な魅力の集大成は最終楽章
にあり、回顧的な枯れた味わいと若々しいキレのある高揚感が同居する稀有なフィナーレを作り上げるの
である。


05/04/29


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