●ベートーヴェン 交響曲 第6番 「田園」
 パドヴァ・ヴェネト管弦楽団
 録音:1995年2月5/6日
 Arts 47247−2(輸入盤)




 これはトンデモなくすばらしい演奏であり、私のマーク様に対する想いは「ジュピター」で火がつき,この「田
園」で燃え上がった!その後の熱の入り用はこのホームページを見ていただければ説明は不用であろう。

 第1楽章の冒頭さっそく驚きある。主題を前半と後半にクッキリ描き分けているのである。大胆極まりない!
その後のベートーヴェンお得意のしつこい繰り返しでは絶妙なテンポ操作とクレッシェンド,デクレッシェンド
を駆使して繊細に描いて行く。全体を包む田園の雰囲気。息を呑むばかりのすばらしさである。
 第2楽章では小川のせせらぎを表すメロディーをクッキリ浮かび上がらせ,ときには沈みこませ,旋律は情
緒的に歌わせ「小川のほとの情景」を描写して行く。
 ここまで聴いたとき,私が心の中で想い描いていた理想の演奏が展開されたと,驚き,喜び,つまり驚嘆し
た。
 しかし、もっと驚くのはオケのすばらしさである!ここで言っているすばらしさは合奏精度とか演奏者の技
量のことではない。技術的なウマイ,ヘタでは成し得ない指揮者に対する信頼,音楽に対する共感,演奏す
る喜びが録音といった不完全なメディアを通して伝わってくるのである。
妄想と言われれば返す言葉はない
が,伝わってきたからしょうがない。もう驚くばかりである。
 第3楽章はその躍動感に心が弾む。そしてトリオに入ると加速がかかり熱っぽさが加わる。これはプロ・ダ
ンサーの踊りではない農民の踊りだと言いたくなる。
 第4楽章の雷雨,嵐に突入する直前4:53でテンポを落とすのも驚きである。ここだけではない絶妙なテン
ポ操作や間合い,アクセントや対旋律の活かし方、すべてが活き活きと脈打ち,聴き手はそのすばらしさに
心打たれるのである。
 そして第5楽章の「自然賛美」のすばらしさは何と表現しょうか?満ち溢れた感謝の気持ちがオケ全体から
伝わってきます。さらに感動的なのはコーダーで一段とテンポを落として朗々と奏でるのである。大胆極まり
ない演奏である。一歩間違えればここだけ浮かび上がり、おバカ演奏になってしまう。しかし,オケが完全に
共感しきっているので、共に演奏してきた喜び,もうすぐ演奏を終えなければならない悲しみ,そんな想いが
伝わってきます。
 まさに感動の相乗効果でこんなすばらしい演奏,これほど感動的な演奏はマーク様でも滅多に実現でき
なかったのではないだろうか?そこらにあるルーティン・ワークによる録音とは次元が違いすぎる。奇跡の
録音と賞賛したい。



 01/06/12

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