●モーツァルト 交響曲 第41番 「ジュピター」
 パドヴァ・ヴェネト管弦楽団
 録音:1996年2〜3月
 Arts 47363−2(輸入盤)



  
 これは大変すばらしい感動的な演奏です。ときおり強調される対旋律,ハッとするアクセント,絶妙なテン
ポ操作,楽器が加わるごとに変化する表情,このような濃厚な表現でありながら音楽の流れはナチュラルで
密度が濃く躍動感あふれる凛々しいモーツァルトです。

第1楽章:
 冒頭のfのモティーフは力強く,pのモティーフはしなやかに奏でる。経過句の0:34で音量を下げすぐさまク
レッシェンドしてフェルマータにつなぐ。0:59から低弦の対旋律が膨れ上がり、再び主旋律が力強く奏でられ
る。このとき低弦のパートをくっきり浮かび上がらせ立体感を構築する。
 第2主題も対旋律を強調してふくらみのあるモティーフを形成する。全休止を挿んでの爆発は大見得を切ら
ず,その後のフレーズ(2:30)でアクセントを付けリズムを強調する。つづく経過句も対旋律や内声部の強調
を行ない立体感を構築する。
 この調子で書き続けると長くなるので以下は簡単に書く,展開部に入るとほの暗い雰囲気が漂うのに驚く,
再現部では明るさを取り戻すがほの暗い雰囲気は最後までつづき,ラストはすばらしいテヌートで締め括る。

第2楽章:
 主題の雰囲気ゆたかな歌い方,1:54のエコーの強弱の付け方,4:21付近のテンポのゆらぎ,など繊細
な演奏を行います。また,6:21では低弦の合いの手が力強く闊達であり,繊細といっても妙に神経質に至ら
ず,全体を柔らかく,しっかりと歌い上げる演奏を聴くことができます。ラストでは微妙なテンポの動きとテヌート
の妙味が味わえます。

第3楽章:
 主題の繊細さ、しなやかなリズムの刻み、フォルテのパッセージの柔らかさ,ひたすら繰り返しのメヌエット
がこれほど活き活きとしていることに驚きます。
 3:16のヴァイオリンの透明な美しさ,木管の合いの手,金管の合いの手といったフレーズにもマークの意志
が行き届き演奏者の共感を感じとることができる。ラストはクレッシェンドとテヌートで締め括る。

第4楽章:
 冒頭を序奏のようにしなやかに歌い0:08から力強く歌う,その後わずかにクレッシェンドしながら高

の凛々
しい展開へとつなげる。
 展開部から再現部は凛々しさに加え,何か別世界に連れて行かれるような深く尊い雰囲気が漂ってきます。
 そしてコーダーを迎えます。8:16今までの流れを断ち切るような深い間!テンポを落として朗々と奏でる
フィナーレ!大胆極まりない演奏です。しかし,そこには感動があるのです。共にここまで演奏してきた喜び,も
うすぐ演奏を終えなければならない悲しみ,そんな想いが伝わってきます。

 こうやって文章にするといろいろ小細工の多い印象をあたえてしまう。前にも書きましたが,これだけ表情付
けの多い濃厚な演奏でありながら音楽にしっかりした流れと躍動感があり凛々しいモーツァルトを聴かせてく
れます。

 まさに知と情の調和であり,見事なバランス感覚であり,聴く者に大きな感動を与えてくれます。

 パドヴァ・エ・デル・ヴェネト管弦楽団は世界的?には無名のオケですがマーク様の指揮によく応え演奏行為
の,熱意,ひたむきさ,喜びが伝わってきます。そして知と情の調和という大変難しく,すばらしい演奏を実現し
ています。


 01/03/12

TOWER RECORDSで購入

 

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