●モーツァルト 交響曲 第29番
 スイス・ロマンド管弦楽団
 録音:1950年8月モノーラル
 LONDON POCL-4601




 ペーター・マーク様のもっとも古い録音は私の知る限りでは(2001年10月現在)1950年8月に録音
されたモーツァルトの交響曲第29番である。マーク31歳の若造時代の録音である。
 この録音を聴いてまず感じるのはこの時代からペーター・マークは凛々しいモーツァルトを演奏していた!
という発見と驚きであった。

 メロディーの歌い方は一音一音を楷書体のようにクッキリと現し、しかもときおりエッジを効かせるなど
変化を与える。また対旋律は力強く、さらにときおり強調され,主旋律と絡んだり,受け渡したりして立体
感を構築する。

 40数年後に録音されたパドヴァ・ヴェネト管弦楽団との録音に聴ける特徴がここでも聴けるのである。

 第1楽章の最初の2音にエッジの効かせた出だしから凝縮感と勢いがありマークの表現意欲が直に
伝わる。主題展開部になると凝縮された響きに重量感が加わり「こりゃ〜ベートーヴェン!?」と思わせ
るほどである。
 第2楽章の主題も一音一音クッキリとして凛とした緊張感がある。主題展開部では先ほど述べた対旋
律の活かしたが発揮され、旋律の受け渡し,浮き沈みの変化を楽しむことができる。
 第3楽章は早いテンポでキビキビとして進むが,トリオに入ると一転テンポがぐっと落ち今までの躍動感
とは一転鄙びた味わいを醸し出すのが興味深い。ただしこのテンポ変化はいささか唐突。
 第4楽章は第1楽章同様に凝縮感と勢いを感じさせる。そこに展開されるのはまさに凛々しいモーツァ
ルトで29番交響曲がこれほど力強く,迫力のある曲だったのかと思わず唸ってしまう。

 と、まぁ美辞麗句を並べたが・・・・演奏に荒さのようなものも感じるもの事実である。もちろん31歳の若
造指揮者にこんなことを求めるのは甚だ贅沢であるが・・・・私のようなファンになるとそこに魅力のような
ものを感じてしまう。

 録音状態は好みの問題もあるが各楽器の分離が強くややカタイ音で残響が乏しい。また瞬間的な音の
欠落があり第4楽章には歪みもがある。と悪口を述べたが全体的には優秀録音で名を馳せたDeccaだ
けあって鮮明な音である。鑑賞に著しい支障をきたすレベルではないことを強調したい。

 むしろ修復や整音によるニュアンスの損失を避けたことを評価したい。


01/10/20


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