日本の黒い夏−冤罪
1994年6月27日長野県松本市で「謎のガス中毒事件」が発生した。翌日,第一通報者である河野氏宅が被
疑者不詳のまま殺人容疑で家宅捜査を受け薬品類が押収された。
このことによりマスコミ各社は河野氏が「農薬調合に失敗し毒ガスが発生したらしい」などと、河野氏を犯人
視する報道を一斉に始めた。
その後,事件はオウム真理教によるサリン散布,無差別殺人犯罪と判明するが河野氏を犯人視した事件
報道や取材のあり方に大きな問題点を残した。
映画は河野氏監修の元,この冤罪事件をどう描くか興味津々でした。
物語は高校の放送部に所属する女子高生・島尾エミ(遠野凪子)が、この冤罪事件のドキュメンタリーを制
作するために地方テレビ局を取材する。
取材に応じたのはTV番組「ニュース・エクスプレス」担当部長の笹野誠(中井貴一)以下、社員の花沢圭子
(細川直美),浅川浩司(北村有起哉)、野田太郎(加藤隆之)の4人が局の会議室で,当時の取材や事件へ
の対応ぶりを説明し,その中で取材や事件の回想シーンを織り込むスタイルで展開されます。
なかなかおもしろい切り口ですね。
おそらく映画の作り手は警察が悪い,マスコミが悪いといった単純化した批判でなく観客ひとり,ひとりがこ
の冤罪事件を考えてもらいたいそんな意図があったのでしょう。
そのため警察権力の横暴だ!マスコミはけしからん!といった感情を抱かせる脚色,演出を避けたので
しょう。それを補うため高校生が冤罪事件を取材する展開を描きそこに感情のやりとりを表現したのでしょう。
しかし、マスコミ批判を題材にするに当たり客観的,公平さを意識し過ぎて脚色を排し感情に訴える演出を
避けたことが裏目に出たのでしょう。
ストーリー展開の起伏に欠け,ドキュメンタリーとしての新鮮みに欠け,事件の再現や取材の描写に迫力が
なく(脚色を排した結果でしょうが)全体として中途半端な印象でした。また、高校生がTV局の対応ぶりを取材
する構成はおもしろいと思ったのですが正しすぎる正論と露骨なキャラクター分けで白けてしまいました。
おもしろい題材に目を付けたと思ったのですが全体として中途半端で淡々とした印象で物足りなさを強く感じ
ました。
01/04/20
前に戻る ホームに戻る