●ボクシングの採点基準を学ぼう!

 越後屋もインターネットの世界に踏み入れボクシング関係のHPを回りましたが畑山 隆則 vs リック吉村
の判定結果について「判定がおかしい!」といった書き込みがいくつか見られました。
 ただし,正直に申しまして「こいつルールを知らないな」と笑ってしまう書き込みや誹謗中傷的書き込みもあり
その下品な内容にげんなりして退散しました。

 批判ばかりでなく採点ルールをきちんと学ぼうよ!といった内容です。ただし,私は公式審判員ではありませ
んので勘違いや間違いがあるかもしれません。そのときはご指導をお願いします(やさしくね)。                           
 まず,はJBC(日本ボクシング・コミッション)ルールから

 第78条 試合の得点はつぎの4項目を基準として評価、採点される。

1:クリーン・エフェクティブ・ヒット(正しいナックル・パートによる的確にして有効なる加撃。有効であるかない
  かは、主として相手に与えたダメージに基づいて判定される)
2:アグレッシブ(攻撃的であること。ただし加撃をともわない単なる乱暴な突進は攻撃とは認められない)
3:ディフェンス(巧みに相手の攻撃を無効ならしめるような防御。ただし攻撃と結びつかない単なる防御のた
  めの防御は採点されない)
4:リング・ゼネラルシップ(試合態度が堂々としてかつスポーツマンライクであり、戦術、戦法的に相手に優れ、
  巧みな試合運びによって相手を自己のペースにもっていくこと)

その他:各ラウンドは独立したラウンドとして採点する。
     世界戦ではなるべく優劣を付けて採点する(ラウンド・マスト・システム)

 このラウンド・マスト・システムは10−10を禁止している訳ではありません。勘違いしないように。

 4:について補足するとリング・ゼネラルシップクリーン・ファイトに分けた方が解りやすいと思います。

 リング・ゼネラルシップ=戦術、戦法的に相手に優れ、巧みな試合運びによって相手を自己のペースに
もっていくこと。

 クリーン・ファイト=試合態度が堂々としてかつスポーツマンライクである。

 1:クリーン・エフェクティブ・ヒット

 一番勘違いしやすく,難しいのが有効打とかクリーン・ヒットと呼ばれるものです。
 パンチが(きれいに)当たればクリーン・ヒットではないのです。注意して欲しいのは「主として相手に与えた
ダメージに基づいて判定される」
とあります。単にパンチが当たっただけでは有効打として評価されないので
す。理想をいえばパンチにパワーがあり,正確に急所を捕らえ,相手にダメージを与えたパンチを有効打と
して評価するのです。
 また世界タイトル・マッチを戦う選手であればパンチをもらうにしても急所をはずしたり,スウェーしてパンチ
の威力を半減するようにします。当然,効いたパンチも効かないふりをします。このあたりのディフェンス能力
も見極めなければなりません,当然ジャッジは見ています。
 まだ,あります。今回の畑山 vs リック戦で喩えるなら畑山の重いパンチ1発とリックの軽いパンチ3発ど
ちらを高く評価するか、難しい問題です。より相手にダメージを与えた方を高く評価するのですが判断が付か
ない場合,他の2,3,4の基準と照らし合わせて判断されます。

 2:アグレッシブ

 畑山 vs リック戦では畑山の方がアグレッシブで1,2ラウンドはリックはその威圧感に押された感じがしま
したが3ラウンド以降はリックが畑山の前進を空転させている感じがしました。すると4:のリング・ゼネラルシッ
プはリックという判断もできます。また畑山の戦いぶりはアグレッシブ・ポイントとしては畑山の手数が少なすぎ
た感じです。

 3:ディフェンス

 畑山 vs リック戦では畑山がブロックを中心としたディフェンス,リックはスウェーやダッキングを中心とした
ディフェンスでした。異なるテクニックを発揮した場合,よりパンチを防いだ方を高く評価するのですが、お互い
クリーン・ヒットが無い場合このポイントでの評価は難しいです。
 また、当たったパンチの威力を半減させるテクニックもディフェンスです。

 4:リング・ゼネラルシップ

 世界タイトルを争う実力者同士が試合をすれば1,2,3の項目でハッキリ差が出ることはあまりありません。
リング・ゼネラルシップ,そのラウンドの主導権を握った方がそのラウンドのポイントを獲るのです。これも解り
にくいのですが,インファイターならよりインファイトをした方が,アウト・ボクサーならよりアウト・ボクシングをした
方が評価されます。
 畑山 vs リック戦では前半は畑山,中盤はリック,後半は畑山が主導権を握った印象です。

 クリーン・ファイトを考えるとリックのクリンチやホールディングはレフェリーが減点を宣告しなくてもジャッジが
マイナス・ポイントと判断したかもしれません。
 公式ジャッジの116−111はに最初,驚きましたがリックのクリンチやホールディングをやりすぎと判断した
のかもしれません。


 さて、畑山 vs リック戦を絡めて採点基準を見てみましたがこの試合では公式のジャッジも評価が分かれ
た採点の難しい試合でした。
 それと自分の採点と公式の採点が違っているときは自分の採点が間違っていると思うことが大切でしょう。専
門の知識と訓練を重ねたジャッジとド素人の判断どちらが正しいか?今更述べる必要はないでしょう。


 参考図書
・ジョー小泉 著書
      「ボクシングにとりつかれた男」
                   (株)広美
・ジョー小泉 著書
     「ボクシング マッチメーカー」
                   (株)広美
・雑誌「ワールド・ボクシング−1995・1月号」
                    日本スポーツ出版社


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