●ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 
 録音:1962年11月
 Westminster



 クナ様といえばワーグナーとブルックナー!斜に構え,あまのじゃくの私でも否定できない。ブラームスからクナ
様のファンになった私はブラームスを加えたいが・・・・
 このシリーズでも,そろそろワーグナーを取り上げよう。取り出したディスクは楽劇「ニュルンベルクのマイス
タージンガー」第1幕への前奏曲/ミュンヘン・フィルである。これは凄い!まるで人里離れた土地で夜の星空を
観て「なんだか吸い込まれそうで・・・・」そう,ゆったりしたテンポによって表現される,絡み合いと雄大なスケール
の妙味が味わえる。Westminsterがこの録音を残してくれたことに感謝したい。

 ゆったりしたテンポといっても遅いテンポではない,ひとつのフレーズが発展し,掛け合い,絡み合う様子が丹
念に表現されます。例えば,0:57〜1:29〜1:40は最初のフレーズと次のフレーズをつなぐジョイント部分。
楽器の受け渡しと,ひたすらの繰り返しです。特に1:29は加速させ次のフレーズへの期待感を高めたいところ
です。しかし、クナ様は悠々と進め,次のフレーズの雄大さを丹念に描いて行きます。単純なイン&スロー・テン
ポとはまるで違う!!!
 また、ここで展開される音楽(全体をとおして)の構築感は圧倒的で,低弦がしっかり土台を固め,高弦が応え,
木管や金管が絡んでくる,すばらしい。またスケールの雄大さは大河の流れの如く,すばらしい!
 7:16付近に注目!エピソードのように挿入され,コーダーへの架け橋の部分である。ここでクナ様がいかに
丹念に絡み合いを表現しているか!ゆったりしたテンポと遅いテンポが似て異なることがよ〜く味わえる。
 さらに驚異的なのはコーダーで8:48からひたすらの繰り返しである。この繰り返しをクナ様は前途の如く丹念
に表現して行く。節目,節目でテンポが落ちて行く感じがする,そのたびにスケールがぐいぐい拡がって行く。9:38
からはビル爆破の映像をスローモーションで観ているかのようだ。この圧倒的な締め括りはクナ様のみが成し得
た最高の至芸と賛美したい。

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