●シューベルト 交響曲 第9番 ザ・グレート
 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 
 録音:1957年10月27日
 SEVEN SEAS


 第1楽章、冒頭のホルンのソロはぶっきらぼうな感じだが弦が絡んでくるとタチマチ音楽が変わる。ぶっきらぼうだった
世界がクナの愛情の満ちた世界に変わるのである。
 主部に入ると遅目のテンポでありながら、その歩みはスパイク・シューズで地面を捉えるようなしっかりした足取りで、推
進力たっぷりの迫力である。その中で弦の厚い刻みで土台をつくり、メロディーが歌い、土俗的な金管が割って入りる。何
といっても音楽が活き活きとしているのがうれしい。コーダーの念を押しで築き上げる迫力はクナ様の至芸と呼びたい。

 第2楽章、冒頭の第1音からして深みのある響きである。第1楽章同様にしっかりした足取りで音楽は進んで行くがメロ
ディーを歌うときの情感たっぷりにしみじみとした歌いこみは、いったいオケにどんな指示をしたのだろうと思ってしまう。
その頂点は中間部8:07で大きな休符の後ピチカートを伴って弦が印象的なメロディーを奏でが極端なスロー・テンポでし
みじみと歌うのである。いつの間にか回想の世界に連れて行かれる不思議な感覚である。そしていつの間にかテンポは
元にもどり現実に世界に戻っている。クナ様マジックを勝手に呼びたい。

 第3楽章、非常に力強いスケルツォである。土俗的なアクセントを伴って楽想が展開され、力強い推進力、うねるような
クレッシェンド&デ・クレッシェンド、ひなびた味わいを醸し出すメロディーがたまらない。

 第4楽章、極端なスロー・テンポであるが、その推進力は力強く。金管を土俗的に強奏させ、間を大胆にとり、木管がひな
びた味わいで奏でる。しかも、ちよっとしたピチカートですら、じつに活き活きしている。
 驚くのはクナ流儀の個性的な演奏でありながら、あのウィーン・フィルがクナ様の指揮に納得して、しかもよろこんで演奏し
ている様子が伝わってくることだ。あのウィーン・フィルだよ。

 クナ様を珍演奇演の達人だと勘違いしている輩に告ぐ。

 クナ様の凄さは「クナ流儀の個性的な演奏をオケに納得さて、よろこんで演奏させてしまう」ことだよ。


 02/08/11


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